日本一といわれる「鏝絵の蔵」

令和2年9月21日

『新潟県の歴史的建造物、機那サフラン酒本舗を見学』

新潟県長岡市摂田屋4-6-33

機那サフラン酒本舗には、日本一といわれる「鏝絵の蔵」があります。1926年(大正15年)に豪商「吉澤仁太郎(にたろう)」によって建てられました。2004年に発生した中越地震によりダメージを受けましたが、全国から寄せられた寄付(復興基金)を使い、地震から4年後修復されました。

「鏝絵の蔵」は、2006年11月29日に国指定の登録有形文化財(建造物)に指定されています。

土蔵造2階建、瓦葺、建築面積52㎡ 規模は桁行5間、梁間3間、切妻造、桟瓦(さんがわら)葺、基礎は石積み、腰は海鼠(なまこ)壁 

内部の極彩色鏝絵は、主屋との境界にある蔵への入口の扉に、恵比須と大黒天、窓の扉には鶴と亀、番いの鶴と松、商売繁盛を象徴した鏝絵が描かれています。

外部は、東面の破風(はふ)部に二匹の龍が描かれており、左端には「左伊」と作者河上伊吉のサイン(左官伊吉の略)が印されています。窓の扉には鳳凰、麒麟、玄武が描かれています。

北面の扉には、猪とススキ、虎と竹、鼠とおもと、牛と紅葉、馬と桜、犬と牡丹、羊と菖蒲、南面の扉には、鳥と菊、うさぎと松、このように外部には十二支の動物と植物が描かれています。

鏝絵は漆喰に絵の具をまぜて色を出すので、鮮やかな色を残すのが難しいのですが、こちらの「鏝絵の蔵」は極彩色の鏝絵が美しく、海鼠(なまこ)壁とのコントラストが素晴らしい蔵です。

作者河上伊吉は商人でしたが、サフラン本舗の鏝絵の蔵を作るために富山県小杉の竹内組で修業をし鏝絵技法を習得しました。

離れ座敷も見学することが出来ました。

ここでは螺鈿の壁「クリーム色の螺鈿の壁とグリーンの螺鈿の壁で塗られた床の間がありました。

離れ屋敷は昭和6年の建築で、むくり屋根天辺の大棟両端には龍と鯉が舞う鬼瓦と鯱鉾(しゃちほこ)が乗っていました。ケヤキの一枚板で敷かれた廊下、桐の天井、18mの杉丸太の桁、床の間にも屋久杉の天井、組子障子、欄間の彫刻など、銘木そして加工が施された建材は最高の物が使われていました。

産業王と言われた「吉澤仁太郎(にたろう)」の夢の館が保存されていくには、地域の皆さんの声とボランティアによる庭園の清掃、建物の清掃があったからです。そして「機那サフラン酒本舗保存を願う市民の会」が2013年に結成され、2015年からボランティアによる休日の公開など、この魅力的な屋敷を多くの人が知り、「鏝絵の蔵」を通して左官の魅力、左官の技術の凄さを日本に残せたのは、地域の皆さんの素晴らしい活動があったからこそだと思いました。歴史的建造物の保存を呼びかけていくにあたって、大変勉強になりました。  

 公益信託 大成建設自然・歴史環境基金助成事業

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この記事を書いた人

50年後100年後も歴史的建造物のある日本の文化的な風景を未来の子どもたちに残すために、左官の文化や左官の技術を後世に伝える活動をしています。

そして歴史的建造物の魅力と保存の重要性・左官職人の必要性を多くの方に知っていただき、塗り壁という日本の建築文化・生活文化の保存と普及につとめてまいります。

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